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023 : 楽園“ハートランド” その6 [楽園“ハートランド”]
シン・ウッドは南国の楽園、ハートランドで恋に落ちた男女の間に生まれた男の子だ。
小学校時代は特に主だった活動こそしていないが、中学から勉強の合間にダンスを始めるようになった。
郵便局や大手デパートなどの1階部分にある巨大なガラスを映し鏡代わりに使って、よく友人たちやソロでダンスをしていた。
当時はHIP-HOPの音楽よりもROCKミュージックで踊るのが流行りだった。
今は、R&Bの音楽に乗って独特な動きで踊るのが流れらしい。
シンはそんなダンスの移り変わりに最近少し寂しさを覚えていた。
高校生になってからもダンスは度々続けていた。
そしてその頃からは、ハートランドの伝統的な舞踊“リベリア”に興味を持ち始めた。
その影響もあってか高校生の時に、民族舞踊研究部という少数のダンス倶楽部に所属していた。
普通のダンス部もあったが、シンにとってはそっちの方が興味があった。
その時に知り合ったのが、ミンクの研究施設で紹介された男、サジだった。
明るい性格のシンと、引っ込み思案のサジ。
性格が真反対の2人であったが、2人は常にお互いを認め合い、尊重しあっていた。
ダンスの腕前はシンの方が上であったが、サジはロボットダンスが上手で、よく2人でパフォーマンスをしていた。
「サジ、サジじゃないか!」
シンは嬉しそうにサジに向かって駆け出した。
後ろで呆然としているカトゥとフローラルは、知り合いですか、と言いたげな顔でこちらを見つめている。
ミンクとハンも同じように2人を見ているが、2人が同じ部活に所属していた事実を知っているために、そんな疑念もすぐに薄らいだ。
しかし、全く反対の印象を持つ2人であったために、やはり2人が知り合いというのは疑念が残る。
サジは、明るくて大きいシンの声に一瞬ビックリこそしたが、すぐにシンの顔を見てメガネの中の瞳を安堵で覆った。
「シン・・・久しいな」
ゆっくりと低い声でサジはシンの肩に手を伸ばした。
少し痩せてしまったサジの身体のことをシンは気にしたが、それでもサジのメガネの中にある二重の鋭い眼光を持つ瞳を見て不思議と安心できた。
「カウントのことはミンク社長から聞いたか?」
サジはモニタールームの画面に映し出されているカウントの被害者やカウントの写真を見て、シンがカウントの説明をすでに受けたものと考えた。
「カウントに・・・俺は俺の部下が被害に遭った」
低い声で話し続けるサジの表情に次第に闇がかかるのがシンにはわかった。
「今は・・・マックス局長のように集中治療室で安置されているが・・・記憶を消された部下の名前を・・・俺は思い出せないでいる・・・」
カウントに記憶を消されるということは、他人の記憶から自分が認識されなくなるということ。
存在していたはずの“有”が完全なる“無”にされる。
サジはいつの間にかメガネの中で少し涙ぐんでいた。
鼻を少しすすり、シンの肩に置いた手に力が篭った。
自分の部下の名前を、どこの誰とも知らない者によって、「殺された」のではなく「消された」のだ。
見たことのある若者が半透明となり、自分の目の前で苦しんでいる。
しかし不思議なことに、その若者が自分の部下であることを何故か知っている。
それなのに自分ではその若者の名前を思い出すことができない。
サジはモニタールームの中にいるカトゥとフローラルの2人に気付いた。
「おまえの部下か?シン」
「ああ・・・俺の後輩たちだ」
「・・・お前は上司が被害に遭ったらしいな」
シンはそれを言われて白い壁に覆われたミンクの集中治療室の中の様子を思い出した。
技術開発局の局長、マックスもカウントによって記憶を消され、存在が消えかかっている。
「完全に存在が消えた後では、もはや彼のことを覚えている者はいなくなる。今は覚えていても、そのうち思い出せなくなる」
記憶を消され、他人の記憶や存在していた証が消えていき、もともと誕生すらしなかったことになる。
「そうなる前に、シン、俺や俺の仲間たちと一緒にカウントを探し出そう」
シンの肩に乗せた手にいよいよ力がみなぎり、サジの悔しさが刻銘に伝わってくる。
下唇を噛み、部下を失いかけている気持ちをサジは顔いっぱいに出していた。
そこにミンクが2人の間に割って入ってきた。
「まったく、泣き虫なのは変わらないな、サジ」
サジはすぐに、すいません、と言った。
「いやいや、悔しい気持ちになるのは僕も同じさ。だから君たちを組織したんじゃないか」
何気ない社長としての一言ではあったが、シンはミンクの言葉の中にある“組織”の言葉が気になった。
「シンたち3人には説明しないとね、サジたちとの調査について」
カウントの能力の被害に遭った者たちは、記憶を消されたことから存在自体が不確かになってしまい、生命を持つものとの接触は不可能となっている。
しかし、白い集中治療室でベットに横たわっていたように、ベットのような無生物になら存在として触ることが可能であるらしい。
これは、生命体としての記憶は消えてしまうが、分子や物質としての事実は最後まで消えないらしい。
「サジの他に今回の調査に加わる者たちは、ハンや僕、シンたち3人を加えると全員で11人いるんだ」
社長、ミンク・スター。
秘書課・課長、ハン・ユースタス。
秘書課・社員、ヨーデル・ブリュット。
秘書課・社員、ハマー・アール。
会計部・部長、サジ・サムター。
会計部・社員、マナ・ウラン。
企画部・社員、コンバー・コロッサス。
人事部・社員、アカネ・アラナミ。
技術開発局・社員、シン・ウッド。
技術開発局・社員、カトゥ・シグナル。
技術開発局・社員、フローラル・チルド。
「以上が今回、カウント調査に参加する者たちだ」
総勢11名のCW社のメンバー。
シンはまだ見ぬ仲間の顔を見たいと心から思ったが、それはまた次の機会にでも叶うことだろう。
記憶を消す能力を使い、多くの人々に恐怖を植えつつある謎の白装束“カウント”。
カウントを探し出そうとする者たちによる追走劇が始まろうとしていた。
小学校時代は特に主だった活動こそしていないが、中学から勉強の合間にダンスを始めるようになった。
郵便局や大手デパートなどの1階部分にある巨大なガラスを映し鏡代わりに使って、よく友人たちやソロでダンスをしていた。
当時はHIP-HOPの音楽よりもROCKミュージックで踊るのが流行りだった。
今は、R&Bの音楽に乗って独特な動きで踊るのが流れらしい。
シンはそんなダンスの移り変わりに最近少し寂しさを覚えていた。
高校生になってからもダンスは度々続けていた。
そしてその頃からは、ハートランドの伝統的な舞踊“リベリア”に興味を持ち始めた。
その影響もあってか高校生の時に、民族舞踊研究部という少数のダンス倶楽部に所属していた。
普通のダンス部もあったが、シンにとってはそっちの方が興味があった。
その時に知り合ったのが、ミンクの研究施設で紹介された男、サジだった。
明るい性格のシンと、引っ込み思案のサジ。
性格が真反対の2人であったが、2人は常にお互いを認め合い、尊重しあっていた。
ダンスの腕前はシンの方が上であったが、サジはロボットダンスが上手で、よく2人でパフォーマンスをしていた。
「サジ、サジじゃないか!」
シンは嬉しそうにサジに向かって駆け出した。
後ろで呆然としているカトゥとフローラルは、知り合いですか、と言いたげな顔でこちらを見つめている。
ミンクとハンも同じように2人を見ているが、2人が同じ部活に所属していた事実を知っているために、そんな疑念もすぐに薄らいだ。
しかし、全く反対の印象を持つ2人であったために、やはり2人が知り合いというのは疑念が残る。
サジは、明るくて大きいシンの声に一瞬ビックリこそしたが、すぐにシンの顔を見てメガネの中の瞳を安堵で覆った。
「シン・・・久しいな」
ゆっくりと低い声でサジはシンの肩に手を伸ばした。
少し痩せてしまったサジの身体のことをシンは気にしたが、それでもサジのメガネの中にある二重の鋭い眼光を持つ瞳を見て不思議と安心できた。
「カウントのことはミンク社長から聞いたか?」
サジはモニタールームの画面に映し出されているカウントの被害者やカウントの写真を見て、シンがカウントの説明をすでに受けたものと考えた。
「カウントに・・・俺は俺の部下が被害に遭った」
低い声で話し続けるサジの表情に次第に闇がかかるのがシンにはわかった。
「今は・・・マックス局長のように集中治療室で安置されているが・・・記憶を消された部下の名前を・・・俺は思い出せないでいる・・・」
カウントに記憶を消されるということは、他人の記憶から自分が認識されなくなるということ。
存在していたはずの“有”が完全なる“無”にされる。
サジはいつの間にかメガネの中で少し涙ぐんでいた。
鼻を少しすすり、シンの肩に置いた手に力が篭った。
自分の部下の名前を、どこの誰とも知らない者によって、「殺された」のではなく「消された」のだ。
見たことのある若者が半透明となり、自分の目の前で苦しんでいる。
しかし不思議なことに、その若者が自分の部下であることを何故か知っている。
それなのに自分ではその若者の名前を思い出すことができない。
サジはモニタールームの中にいるカトゥとフローラルの2人に気付いた。
「おまえの部下か?シン」
「ああ・・・俺の後輩たちだ」
「・・・お前は上司が被害に遭ったらしいな」
シンはそれを言われて白い壁に覆われたミンクの集中治療室の中の様子を思い出した。
技術開発局の局長、マックスもカウントによって記憶を消され、存在が消えかかっている。
「完全に存在が消えた後では、もはや彼のことを覚えている者はいなくなる。今は覚えていても、そのうち思い出せなくなる」
記憶を消され、他人の記憶や存在していた証が消えていき、もともと誕生すらしなかったことになる。
「そうなる前に、シン、俺や俺の仲間たちと一緒にカウントを探し出そう」
シンの肩に乗せた手にいよいよ力がみなぎり、サジの悔しさが刻銘に伝わってくる。
下唇を噛み、部下を失いかけている気持ちをサジは顔いっぱいに出していた。
そこにミンクが2人の間に割って入ってきた。
「まったく、泣き虫なのは変わらないな、サジ」
サジはすぐに、すいません、と言った。
「いやいや、悔しい気持ちになるのは僕も同じさ。だから君たちを組織したんじゃないか」
何気ない社長としての一言ではあったが、シンはミンクの言葉の中にある“組織”の言葉が気になった。
「シンたち3人には説明しないとね、サジたちとの調査について」
カウントの能力の被害に遭った者たちは、記憶を消されたことから存在自体が不確かになってしまい、生命を持つものとの接触は不可能となっている。
しかし、白い集中治療室でベットに横たわっていたように、ベットのような無生物になら存在として触ることが可能であるらしい。
これは、生命体としての記憶は消えてしまうが、分子や物質としての事実は最後まで消えないらしい。
「サジの他に今回の調査に加わる者たちは、ハンや僕、シンたち3人を加えると全員で11人いるんだ」
社長、ミンク・スター。
秘書課・課長、ハン・ユースタス。
秘書課・社員、ヨーデル・ブリュット。
秘書課・社員、ハマー・アール。
会計部・部長、サジ・サムター。
会計部・社員、マナ・ウラン。
企画部・社員、コンバー・コロッサス。
人事部・社員、アカネ・アラナミ。
技術開発局・社員、シン・ウッド。
技術開発局・社員、カトゥ・シグナル。
技術開発局・社員、フローラル・チルド。
「以上が今回、カウント調査に参加する者たちだ」
総勢11名のCW社のメンバー。
シンはまだ見ぬ仲間の顔を見たいと心から思ったが、それはまた次の機会にでも叶うことだろう。
記憶を消す能力を使い、多くの人々に恐怖を植えつつある謎の白装束“カウント”。
カウントを探し出そうとする者たちによる追走劇が始まろうとしていた。
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